プレス機には、大きく分けて 上ラム式(上にラム=加圧するシリンダーがあるタイプ)と 下ラム式(下にラムがあるタイプ)の2種類があります。
一見するとどちらも同じようにワーク(加工する素材)を圧力で処理する機能を果たしますが、その設計思想や使い勝手に明確な違いがあります。
この記事では、上ラムと下ラムの構造的な違い、メリット、デメリット、さらには具体的な用途や実際の活用事例について詳しく解説していきます。
目次
上ラムと下ラムの基本構造の違い
上ラム式とは?
上ラム式は、加圧シリンダー(ラムシリンダー)が機械の上部に配置されているタイプです。
このタイプは、加工時にラムシリンダーが上から下へ動いてワークに圧力をかけます。
上ラムの特徴
- 一定のパスライン(PL)
ワーク投入高さが一定のため、自動化設備や搬送装置の設置が容易です。 - ピット不要
シリンダーストロークが長くても、設置場所にピットを掘る必要がありません。高さ方向のスペースだけで設計が可能です。
下ラム式とは?
一方、下ラム式は、加圧シリンダーが機械の下部に配置されているタイプです。
この場合、ラムシリンダーが下から上へ動いてワークに圧力をかけます。
下ラムの特徴
- 安全性が高い
移動盤が下にあるため、開口時に落下する心配がなく、型交換作業も安全に行えます。 - 低圧制御が可能
油圧でスライダーを持ち上げて加圧するため、低い圧力での制御が得意です。
上ラムと下ラムのメリットを比較
上ラムのメリット
- 安定したワーク投入高さ
パスラインが一定で、ダイリフターや搬送装置を配置しやすい設計です。自動化ラインにも最適です。 - 設置が簡単
ストロークが長くてもピットが不要で、設置スペースの自由度が高まります。
下ラムのメリット
- 高い安全性
スライダーが下部にあるため、開口時の落下リスクがゼロ。追加の落下防止装置が不要で、作業時の安心感が高まります。 - 柔軟な加圧制御
スライダーを油圧で支えながら加圧することで、低圧での繊細な制御が可能。例えば、低圧での予熱工程や徐々に圧力を上げるプロセスにも対応できます。
実際の用途や活用事例
下ラムの活用事例:J-PRESS NEOのゼロプレス
下ラムの特性を最大限に活用した例が、J-PRESS NEOシリーズの ゼロプレス です。
このプレス機では、スライダーの自重を利用して極めて低い圧力でワークを予熱することが可能になりました。
例えば:
- 予熱工程
加圧力を最低限に抑えることで、ワークと熱板が触れるだけの状態で予熱できます。 - 低圧加圧の実現
従来の油圧では最低数十トンが必要だったのに対し、数トンからの制御が可能に。
これにより、新素材や炭素繊維、ゴムの加工が格段に柔軟になります。
上ラムと下ラムを選ぶ際のポイント
- 作業環境に合わせる
自動化ラインを構築したい場合や、省スペースが必要な場合には上ラム式が適しています。
一方、安全性や低圧制御を重視する場合は下ラム式がおすすめです。 - 加工プロセスに合わせる
低圧での予熱や段階的な加圧が必要な工程には下ラム式が適しています。
高い圧力を安定的にかける工程には上ラム式が効率的です。
まとめ:あなたのプロジェクトにはどちらが最適?
上ラムと下ラムには、それぞれ特有の利点があります。
選択の際には、以下を考慮してください:
- 設置スペースやライン構築の自由度が重要なら 上ラム
- 安全性や精密な圧力制御が求められるなら 下ラム
どちらを選ぶにしても、適切な選択が製品開発の可能性を広げます。
あなたの製品にとってベストなプレス機を選んで、次の成功を掴んでください!