プレス機を扱う際、多くの方が混乱する原因は、実は「シリンダーにかかる油圧」と「ワークにかかる圧力」という2種類の圧力の違いにあります。この2つの圧力はそれぞれ別の単位で表され、用途も異なるため、理解が難しくなりがちです。
この記事では、シリンダーの油圧とワークの圧力をしっかり区別し、圧力単位の変換方法や計算例を通して分かりやすく解説します。これにより、圧力設定や管理に迷わず対応できるようになるでしょう。
圧力換算:MPa⇔kgf/cm2
油圧で使う圧力単位は主に2種類、MPa(メガパスカル)とkgf/cm2(キログラムフォース パー スクエアセンチメーター)があります。
1MPa≒10.2kgf/cm2
1kgf/cm2≒0.098MPa
換算例)
・10MPa≒10×10.2=102kgf/cm2
・10kgf/cm2≒10×0.098MPa=0.98MPa
(⇒10kgf/cm2はだいたい1MPaだと思っておけば楽です!)
国・地域ごとの圧力単位
国や地域ごとでよく使う圧力単位が違いますので、代表的な圧力単位の換算を以下に示します。
1MPa=10bar
1MPa=145psi(ポンド毎平方インチ)
1MPa≒1097.61 ton/ft²(トン毎平方フィート)
ちなみに、1 cm=0.3937 インチ(in)、1 フィート(ft) = 12 インチ(in)です。
各国・地域ごとに油圧の圧力単位と単位面積当たりの力の一般的な使用単位をまとめました。
地域・国 | 油圧の圧力単位 | 単位面積当たりの力 |
---|---|---|
日本 | MPa | kgf/cm² |
アメリカ | psi | psi, ton/ft² |
ヨーロッパ | MPa, bar | kgf/cm², N/m² |
中国 | MPa | kgf/cm² |
韓国 | MPa | kgf/cm² |
インド | MPa, bar | kgf/cm², N/m² |
東南アジア | MPa, bar | kgf/cm² |
ロシア | MPa, bar | kgf/cm² |
このように、日本やアジア諸国は MPa・kgf/cm² を標準的に使用し、アメリカは psi をメインに、ヨーロッパでは bar もよく使われています。
油圧とワーク圧力で混乱しないために
最初に言いましたが、プレス機を使って仕事する場合、シリンダーにかかる(油圧の)圧力とワークにかける圧力の2種類の圧力を使うため、たびたび混乱を招きます。
私たちプレス機を設計する側と素材を加工するあなたの側とでは、日常的に異なる圧力に注目しているし、使う単位も違うかもしれません。
ですので、私たちは使う場面で意識的に単位を変えています。
あくまでも私たちの区別の仕方ですので、一例として見てください。
ちなみに、プレス機のタッチパネルの単位は、当然あなたの使い慣れた単位で設定できるようにしますので、ご安心を。
油圧の単位はMPa
私たちは、油圧の圧力の単位にはMPa(=N/mm2)を使います。
ワークにかける圧力はkgf/cm2
一方、ワークに加える単位面積当たりの力はkgf/cm2を使います。
これには利点があって、「〇〇トンで加圧する」の〇〇tonを算出するのに向いています。
例えば、50cm角のワークに10kgf/cm2かける場合何トンで加圧すればいいかというと、
50cm x 50cm x 10kgf/cm2 / 1000 =25ton
で「25トンで加圧すればいいんだ」と、すぐに計算できます。
ここで長さの単位にmmではなくcmを使ったのも、油圧では計算しやすく独特かもしれません。
ワークにかける圧力から油圧を求める計算例
では、一つ計算例を示しましょう。
【油圧圧力算出例】
プレス機は100tonプレスで、φ250のラムシリンダー一本で加圧します。
ワークは、上記の例をそのまま使って、50cm角のワークに10kgf/cm2かけることとします。
このとき、油圧は何MPaの圧力をかけたらいいでしょう?
まず、何トンの力が必要かを求めていきましょう
これは、上でやりましたね。
50cm x 50cm x 10kgf/cm2 / 1000 =25ton
次にシリンダーの受圧面積を求めましょう
受圧面積とは、圧力のかかる面積のことでシリンダーの面積のことです。
φ250シリンダーの半径は12.5cmなので、
12.5^2 x 3.14 ≒ 490cm2
ちなみに、この100tonプレス機は最大圧力20.6MPaですので、最大加圧力は
490cm2 x 20.6MPa x 10.2 / 1000 ≒ 102ton
となります。
最後に油圧の圧力を算出します
25ton x 1000 / 490cm2 ≒ 51kgf/cm2 ≒ 51 x 0.098MPa ≒ 5MPa
となります。