プレス機を扱う際、多くの方が混乱する原因は、実は「シリンダーにかかる油圧」と「ワークにかかる圧力」という2種類の圧力の違いにあります。この2つの圧力はそれぞれ別の単位で表され、用途も異なるため、理解が難しくなりがちです。
この記事では、シリンダーの油圧とワークの圧力をしっかり区別し、圧力単位の変換方法や計算例を通して分かりやすく解説します。これにより、圧力設定や管理に迷わず対応できるようになるでしょう。
圧力換算:MPa⇔kgf/cm2
油圧で使う圧力単位は主に2種類、MPa(メガパスカル)とkgf/cm2(キログラムフォース パー スクエアセンチメーター)があります。
1MPa≒10.2kgf/cm2
1kgf/cm2≒0.098MPa
換算例)
・10MPa≒10×10.2=102kgf/cm2
・10kgf/cm2≒10×0.098MPa=0.98MPa
(⇒10kgf/cm2はだいたい1MPaだと思っておけば楽ちんです!)
油圧とワーク圧力で混乱しないために
最初に言いましたが、プレス機を使って仕事する場合、シリンダーにかかる(油圧の)圧力とワークにかける圧力の2種類の圧力を使うため、たびたび混乱を招きます。
私たちプレス機を設計する側と素材を加工するあなたの側とでは、日常的に異なる圧力に注目しているし、使う単位も違うかもしれません。
ですので、私たちは意識的に使う場面で単位を変えています。
あくまでも私たちの区別の仕方ですので、一例として見てください。
ちなみに、プレス機のタッチパネルの単位は、当然あなたの使い慣れた単位で設定できるようにしますので、ご安心を。
油圧の単位はMPa
私たちは、油圧の圧力の単位にはMPa(=N/mm2)を使います。
ワークにかける圧力はkgf/cm2
一方、ワークに加える単位面積当たりの力はkgf/cm2を使います。
これには利点があって、「〇〇トンで加圧する」の〇〇tonを算出するのに向いています。
例えば、50cm角のワークに10kgf/cm2かける場合何トンで加圧すればいいかというと、
50cm x 50cm x 10kgf/cm2 / 1000 =25ton
で「25トンで加圧すればいいんだ」と、すぐに計算できます。
ここで長さの単位にmmではなくcmを使ったのも、油圧では計算しやすく独特かもしれません。
ワークにかける圧力から油圧を求める計算例
では、一つ計算例を示しましょう。
【油圧圧力算出例】
プレス機は100tonプレスで、φ250のラムシリンダー一本で加圧します。
ワークは、上記の例をそのまま使って、50cm角のワークに10kgf/cm2かけることとします。
このとき、油圧は何MPaの圧力をかけたらいいでしょう?
まず、何トンの力が必要かを求めていきましょう
これは、上でやりましたね。
50cm x 50cm x 10kgf/cm2 / 1000 =25ton
次にシリンダーの受圧面積を求めましょう
受圧面積とは、圧力のかかる面積のことでシリンダーの面積のことです。
φ250シリンダーの半径は12.5cmなので、
12.5^2 x 3.14 ≒ 490cm2
ちなみに、この100tonプレス機は最大圧力20.6MPaですので、最大加圧力は
490cm2 x 20.6MPa x 10.2 / 1000 ≒ 102ton
となります。
最後に油圧の圧力を算出します
25ton x 1000 / 490cm2 ≒ 51kgf/cm2 ≒ 51 x 0.098MPa ≒ 5MPa
となります。