油圧プレスを運用する際、多くの人がシリンダーにかかる油圧とワークにかかる圧力の違いに戸惑います。
これらの圧力は異なる単位で表され、用途も異なるため、理解が難しいことがあります。
この記事では、特にアメリカで使用される油圧圧力単位に焦点を当て、日本や他の国々と異なる単位が使われていることを明確にしながら、油圧シリンダーの圧力とワークにかかる圧力の違いを説明します。
また、圧力単位の変換方法や計算例を紹介し、アメリカのユーザーがより理解しやすい内容としています。
アメリカの現場での単位使用の実情
理論的には、シリンダーにかかる油圧(psi)とワークにかかる圧力(ton/ft²)は明確に区別して使われますが、実際のアメリカの現場では、必ずしも明確に使い分けられているとは限りません。
- エンジニアは psi を基準に計算するが、オペレーターはトンで考えることが多い
- 設計や解析では psi を使用して計算するが、オペレーターは「〇〇トンの力を出すには〇〇psi」と経験的に理解している場合が多い。
- 現場では単位が混在することもある
- 設備の仕様書や設計は psi で記載されていても、作業者が圧力を設定する際は「トン」で考えることが多い。
- シリンダーの油圧とワークにかかる圧力の違いを厳密に理解していないケースもある。
- 自動制御の普及により単位変換の意識が薄れる
- 最新の油圧プレスはタッチパネルで単位を自動変換するため、オペレーターが psi や ton/ft² を意識せずに設定できる。
このように、アメリカの現場では psi と ton/ft² を厳密に分けて考えることが必ずしも一般的ではなく、状況に応じて単位を使い分ける柔軟さが求められます。
圧力単位変換:psi ⇔ ton/ft² ⇔ MPa
アメリカでは、油圧機器の圧力単位としてpsi(ポンド毎平方インチ)が一般的に使用され、ワークの加圧にはton/ft²(トン毎平方フィート)が用いられます。
1 psi ≈ 0.072 ton/ft²
1 ton/ft² ≈ 13.89 psi
1 MPa ≈ 145 psi
1 MPa ≈ 10.2 kgf/cm²
1 kgf/cm² ≈ 0.098 MPa
1 kgf/cm² ≈ 14.22 psi
1 kgf/cm² ≈ 0.2048 ton/ft²
1 ton/ft² ≈ 4.882 kgf/cm²
変換例:
- 100 psi ≈ 100 × 0.072 = 7.2 ton/ft²
- 10 ton/ft² ≈ 10 × 13.89 = 138.9 psi
- 10 kgf/cm² ≈ 10 × 0.2048 = 2.048 ton/ft²
- 5 ton/ft² ≈ 5 × 4.882 = 24.41 kgf/cm²
- 1 MPa ≈ 145 psi
- 1 MPa ≈ 10.2 kgf/cm²
(ヒント:14 psi は約 1 ton/ft² と考えると簡単!)
計算例:ワークに必要な加圧力から油圧を計算
では、一つ計算例を示しましょう。
100トンのプレス機が直径10インチ(φ10インチ)のシリンダーを使用。
ワークサイズは 1 ft × 1 ft、ワーク単位圧力は 10 ton/ft²。
ステップ1:必要な加圧力を求める
1 ft × 1 ft × 10 ton/ft² = 10 tons
ステップ2:シリンダーの圧力面積を計算
シリンダーの受圧面積は、シリンダーの断面積に相当します。
直径 10インチ のシリンダーは、半径が 5インチ なので:
5² × 3.14 ≈ 78.5 in²
ステップ3:必要な加油圧を求める
公式を使用して計算:
必要なトン数 × 2,000 / シリンダー受圧面積(in²)
10 tons × 2,000 / 78.5 in² ≈ 255 psi
答え: 必要な油圧は 約255 psi です。