「木材圧密は、知識と経験が必要で難しそう!」と思っているあなた!
朗報です。
木材圧密は、やり方さえわかってしまえば簡単です。
私の過去の経験から、木材圧密を『5つの管理』にまとめたので、これを参考に是非圧密をマスターしてください。
はじめに
木材圧密の『5つの管理』を解説していく前に、圧密の時に木材の中で何が起きているのかを簡単に説明しておきます。
木材の中のイメージを持っていると、『5つの管理』の理解度が段ちで変わってきます。
木材の接着剤『リグニン』
木材の主要素は、『セルロース』『ヘミセルロース』『リグニン』の3要素です。
このうち『セルロース』と『ヘミセルロース』は骨組みの役割をしています。
そしてその骨組みをくっつけて固める接着剤の役割を担っているのが『リグニン』です。
このリグニンのただ一つの特性を覚えておきましょう。
水分を含んだ木材の中のリグニンは、80~100℃で軟化が始まります。
逆に、50~60℃まで冷ますと硬化して、木材の現状を強力に維持します。(あくまでも私の経験の中でのイメージですが)
このリグニンの特性を知っておくと、これからお話しする木材圧密の『5つの管理』がとても腑に落ちます。
木材圧密の管理1.圧力管理
木材圧密の加圧力は材質(木材の硬さ)によって大きく変わります。
まずは材料の種類ごとの大まかな圧力を知り、そのあと木材圧密に最適な加圧システムをご紹介します。
木材圧密で主な単位面積当たりの圧力・・・kgf/cm2
針葉樹、広葉樹どちらも圧密材として使いますが、広葉樹の加圧力は針葉樹の倍以上となります。
以下に本加圧の参考値を記します。
軟質針葉樹 ・・・20~30kgf/cm2
中硬質針葉樹・・・30~45kgf/cm2
中硬質広葉樹・・・90~120kgf/cm2
例えば、材料を1mx1mに並べて30kgf/cm2で圧密する場合、
100cm x 100cm x 30kgf/cm2 = 300,000kfg = 300ton
加圧能力300ton以上の熱プレス機が必要となります!
かなり高圧ですね。
木材圧密にはサーボ制御が最適
安定した品質を保つためには、正確な圧力管理が必要です。
正確な圧力管理とは、設定した加圧力を常にキープするということです。
従来型のプレス機では加圧力を保持するために比例弁を用いたり、ロッキング回路を組んだりします。
しかし、圧密では加圧時間が長時間にわたるため、油温の上昇やエネルギーロスが課題となります。
またロッキング回路では、厚みが変化するうちは『加圧保持⇔復圧』を頻繁に繰り返し、そのたびにオーバーシュート(圧力低下から設定圧以上の圧力に瞬間的に増圧)してしまいます。
これらの問題をきれいさっぱり解決してくれるのが、サーボ制御の油圧ユニットです。
代表的なものとしては、ダイキンの『スーパーユニット』やカワサキの『エコサーボ』です。
P(圧力)-Q(流量)制御が自由自在!
省エネ!
静か!
おまけに、
従来色々ついてきた制御弁がほとんど不要!
と、一度使ったら従来の回路には戻りたくなくなります。
このサーボ制御ユニットに関しては、また別の機会にお話しますが、とにかくおススメです!
木材圧密の管理2.温度管理
木材圧密を成功させるためには、温度管理が重要な要素です。
しかし、これは接着や成型プレスでの温度管理とは異なり、特有の配慮が求められます。
単に熱板の昇温速度や温度の均一さを意識するだけではなく、木材圧密の品質を安定させるための3つの温度管理ポイントをご紹介します。
木材圧密の適正温度とは
冒頭で述べた通り、圧密する木材の部分を80℃以上に加熱することが重要です。
表層圧密であれば比較的短時間で温度を上げられますが、例えば90mm厚のヒノキを40%(36mm)まで圧密する場合、芯部まで80℃以上に昇温する必要があります。
木材は断熱性が高いため、芯部への昇温には時間がかかります。
試しに200℃まで昇温してみると、表面が焦げるといった問題も発生します。
こうした経験から、自分の材料に合わせた適正な温度と昇温方法を見つけることが重要です。
木材圧密に冷却工程は必要か?
リグニンの硬化には冷却が必要と言いましたが、本当に冷却は必須なのでしょうか。
もし冷却工程を省略できれば、圧密の効率は2倍に向上する可能性もあります。
私の経験では、冷却工程を省略するとスプリングバック(圧力解放後の膨らみ)が発生しました。
これは、高温高圧状態の水分が圧力解放により水蒸気に変化するためと考えられます。
適切な拘束力を保持しながら冷却を行うことが、安定した圧密品質を保つためには必要と感じています。
「木材圧密に冷却工程は不要」と証明されている場合があれば、ぜひご教示いただきたいところです!
木材圧密における温度と圧力の関係
木材圧密では、昇温開始と同時にフルパワーで加圧するべきか、それとも温度が上がってから加圧するべきか、タイミングの見極めが重要です。
私の考えとしては、昇温前に加圧すると『セルロース』や『ヘミセルロース』が損傷し、期待する強度が得られない可能性があると感じています。
この点も実験によって検証し、最適なタイミングを導き出すことが、安定した圧密を実現するためには不可欠です。
木材圧密の管理3.厚み管理
最終製品には、どの程度の圧縮率が求められるでしょうか?
圧縮率の設定は、製品の強度や仕上がりに直接影響するため、製造過程での試行錯誤が重要です。
圧縮率の適切な管理は、プレスメーカーにとって非常に重要なポイントです。
わずかな圧縮率の違いで、必要なプレス能力が数十トンから100トン以上変わることもあります。
そのため、製品に必要な圧縮率を正確に把握し、必要以上の圧縮を避けることが、イニシャルコストの低減にもつながります。
適正な圧縮率を追求することで、無駄なコストを削減しながら効率的な生産を実現できます。
また、実際の製造環境を想定し、高さにばらつきのある材料を一度にプレスする状況での試験も必要です。
現場で使用される材料構成に近い条件で圧密を行うことで、製品の均一性や仕上がりに与える影響を検証し、最適なプレス設定を見出すことが求められます。
さらに、圧縮率の調整には、木材の初期厚みや密度、含水率などの要因も影響を及ぼします。
これらの条件に応じたプレス機の設定を微調整することで、製品の品質を安定させることが可能です。
このように、試験と調整を重ねることで、強度と仕上がりのバランスが取れた高品質な木材製品の製造を目指しましょう。
木材圧密の管理4.時間管理
木材圧密のプロセスは時間がかかりがちであるため、効率的な時間管理が事業成功の鍵を握ります。
研究・開発段階では時間をかけることも可能ですが、事業として利益を出すためには、各工程の効率化が不可欠です。
まず、木材圧密の目的を明確にすることが重要です。
目的が明確であれば、必要なプロセスや効率化の余地が判断しやすくなります。
木材圧密の主な目的とその用途の例は以下の通りです。
- 強度の高い木材の製造
建築材としての利用を想定し、圧密によって強度を向上させた木材が求められます。特に耐荷重性が重要な場面での使用が想定されます。 - 表面硬度の高い木材の製造
表面の耐久性を高めた木材は、床材に適しています。人の歩行や家具の移動による摩耗に耐え、長期間にわたり美しい状態を保つため、表面硬度の向上が重要です。 - 意匠性の高い木材の製造
木材特有の質感やデザイン性を生かした製品は、家具やインテリアなど、美観が重視される用途に需要があります。 - 廃材の有効活用
廃材を圧密加工することで新たな価値を生み出し、資源の有効活用と環境への配慮を実現します。
次に、これらの目的を達成するため、プロセスの設計と効率化を検討します。具体的には以下の方法が有効です。
- プロセスの選別と省略
各工程の重要度を評価し、不要な部分を省略したり、短縮可能な工程を見つけることで、全体の効率を向上させます。 - 効率的な手法の導入
例えば、プレス工程前にプレ加熱工程を加えることで、木材の圧密にかかる時間を短縮することが期待できます。
また、蒸気加熱を利用して昇温時間を短縮することで、工程全体の時間を大幅に削減することが可能です。
このように効率化のための具体的な手法を導入することで、木材圧密事業の生産性を向上させ、持続可能で利益を生み出す事業として確立を目指しましょう。
木材圧密の管理5.水分管理
木材圧密において、水分のコントロールは品質の安定と仕上がりに直結する重要な要素です。
適切な水分管理が行われていないと、圧密プロセスにおいて木材の割れや歪みが発生しやすくなり、製品の品質が不安定になる可能性があります。
一般的に、含水率が低すぎると、木材内部や表面に割れが生じ、品質が低下します。
一方で、含水率が高すぎると、圧密工程で内部の水分が抜けにくくなり、加工精度や均一性に影響を及ぼすことがあります。
さらに一歩進んで、木材の部位ごとに異なる水分量を設定することで、圧密効果に新たな変化を生み出せる可能性があります。
例えば、表層部の水分を高めにすることで、表層圧密のコントロールがしやすくなり、全体的な加工精度も向上することが期待されます。
このように、水分量を工夫することで、仕上がりの美しさや強度の向上が図れるかもしれません。
適切な水分管理の条件を見つけるためには、温度や湿度などの要素も含め、さまざまな条件下で試験を重ねることが必要です。
こうした取り組みによって、木材圧密技術の新たな可能性が広がり、より高品質で多様な用途に対応する木材製品の開発が期待できます。
木材圧密の失敗経験から学ぶ
何にしても、失敗から学ぶことは身になりますね。
あなたの代わりに私がいっぱい失敗しているので、少しずつ紹介していきます。